定年京都移住2-88_谷崎文学
10月のNHK100分de名著は谷崎潤一郎スペシャル、「痴人の愛」「吉野葛」「春琴抄」「陰翳礼讃」を作家で法政大学教授の島田雅彦氏が解説した。
明治19年日本橋生まれ、東京帝大を退学した明治末期から昭和中期にかけ、耽美的な作品を数多く執筆している。
目次は4作品の順に ①エロティシズムを凝視する ②母なるものを探す旅 ③闇が生み出す物語 ④光と影が織りなす美 となる。
谷崎文学のテーマはエロティシズムの追求であり、紫式部「源氏物語」が体現する「色好み」の文化を引き継ぎ、その末端に接続を試みた、と解説する。
戦時中に源氏物語の現代語訳に没頭した谷崎の作品は、源氏物語のパロディであり、オマージュであり、色好みの二十世紀バージョンだという。
自分自身の「変態性」を自覚したうえで、人間の抱え込む複雑な欲望や無意識の本能、性的倒錯を色好みという文脈で肯定することにより、読者も安心して変態性の共犯関係を結ぶのだそうだ。