定年京都移住1-54_しあわせ倶楽部
「京都しあわせ倶楽部」はPHP研究所が発行する京都本シリーズで、柏井壽さんが編集主幹を務める。
柏井さんの「ぶらり京都しあわせ歩き」や養老さんの「京都の壁」もこの新書版叢書に含まれる。
他にも辰巳琢郎著「ほんとうは教えたくない京都の路地裏」、浜村淳著「京都人も知らない京都のいい話」、早川茉莉編「京都好き」を読んだ。
辰巳さんは7年かけて京都大学を卒業した知性派俳優、還暦世代のスターだ。
浜村さんは鷹峯育ち、同志社大学卒の84歳、五木ひろし、八代亜紀を輩出した全日本歌謡選手権の名司会が懐かしい。
二人とも京都に馴染みが深く、本の題名通りの博識ぶりに感心した。
早川さんはこの本で29人による京都のアンソロジーを編集したが、ご自身も自宅近くの西陣「のばら珈琲」を紹介している。
我らがヒーロー、東山高校出身みうらじゅんのエッセイから梶井基次郎の檸檬まで多種多様だが、皆京都に魅せられていることがよく分かる素敵な選集だ。
定年京都移住1-53_京都ぎらい
井上章一さんの著書「京都ぎらい」は、これから移住する身にとって大変参考になる。
「洛外でくらす者がながめた洛中絵巻」とあり、その特殊性を辛辣に描いているが、他所者には尚のことだ。
洛外といっても、大覚寺門跡や清涼寺など皇族由来の寺も多く、風光明媚な嵯峨のご出身と聞けば、関東人などは憧れるに違いない。
「京都とちがうんやで」と言い放つ洛中の住人はイケズだが、確かに千年の昔から文化の中心は洛中にあったのだろう。
養老さんに言わせれば、「京都の壁」は「地方の出身者にはとてつもなく大きく存在し、それがまた京都のステータスを上げている」うえ、「お金を使ってくれる観光客は歓迎しても、自分たちの習慣を頑なに守り、よそ者は受け入れない」のだ。
一方で、京都の凄さは伝統を守るばかりでなく、新しいものを取り込み、商いに繋げていくところにある。
今さら地域に溶け込むことは難しいが、観光客としての暮らしもそれなりに楽しめそうだ。
定年京都移住1-52_京都の壁
養老孟司さんの著書「京都の壁」は面白かった。
16年前の大ベストセラー「バカの壁」以来、壁シリーズ含め著作を読み、出演番組があれば楽しく拝見した。
組織に長くいると、思考の固定化、ウチの常識、が知らぬ間に付着しバカになっていく。
歳を取ると人の言うことを聞かなくなるので、気を付けねばと思う。
この本は、新書大賞を受賞した井上章一著「京都ぎらい」と異なり、関東人のニュートラルな視点に立っている。
京都のことを好きでも嫌いでもない著者は、基本的に「あるものはしょうがないだろう」と考える。
ただ京料理や和菓子の美しさを絶賛し、そぞろ歩きが楽しい、都会では貴重な街だと認め、お金だけでない価値観がある、と評する。
京都は長い時代を経て「鴨川の水のように、世の中は諸行無常である」ことを体験してきた人の街で、世の移り変わりを忘れないのが京都人の本質、とある。
そして京都の壁は、今も色濃く残るゲマインシャフト、地域共同体の壁だと締め括る。
定年京都移住1-51_京都の定番
京都の案内本は多いが、柏井壽さんの本は3冊読んだ。
「京都の定番」「ぶらり京都しあわせ歩き」「できる人の京都術」だ。
著者紹介に「作家・カリスマ京都案内人」とある通り、情報の密度は他を圧倒する。
あのショーケンが主演したドラマ「鴨川食堂」の原作者でもある。
帯に「東寺にせよ清水寺にしても、訪れる度に何かを見つけ、都度感動している」「京都を歩き、寺社を参詣し、美味しいものを食べる。それがしあわせに繋がるのなら、こんなにありがたいことはない」とある。
まさに「京都にはしあわせという空気が満ち溢れている」に同感だ。
「できる人の京都旅、その要諦は愉しむことにある。好奇心を満たすゆとり、遊びがあってこそ、京都旅を心底愉しめる」のだが、つい毎回詰め込んでしまう。
あとがきの「京都の定番は飽きることなく、汲めども尽きぬ泉のように絶えず湧き出し、多くの愉しみを与えてくれる」のだから、ゆったりした気持ちで暮らしたい。
定年京都移住1-50_京都案内本
「極上の京都」に出演した杉本節子さんは、杉本家10代目にして料理研究家、妹の歌子さんとの共著「0円から愉しむ京都案内」を読んだ。
55件のうち38件が千円以下、この本は「京の安くていいもの」の参考になる。
湯波半のぼたんゆば300円、七味屋本舗の山椒500円、厄除け伯牙山のちまき600円、杉本家住宅の一筆箋500円もある。
杉本家は山鉾「伯牙山」のお飾り場、京町家唯一の重要文化財で、庭園は名勝指定の大商家だが、質素な暮らし振りだったそうだ。
「船越栄一郎の京都案内」は、「京都の極み」でお馴染みの京コンシェルジュが、グルメを中心に季節の名所や土産品まで紹介する。
蕎麦、ラーメンや甘いもんパートもあるが、やはり高級店が多いので、「清水の舞台から飛び降りる覚悟の店リスト」に加えておく。
もう一冊、グレゴリ青山著「深ぼり京都散歩」は、味わいのあるマンガで京都人の穴場を案内する。
伏見水めぐり、知られざる山科、など周辺エリアのローカルネタが面白い。
定年京都移住1-49_絶景庭園
「京都浪漫 美と伝統を訪ねる」に出演した庭園デザイナー烏賀陽百合さんの著書「一度は訪れたい京都絶景庭園」を読んだ。
番組で取り上げた鞍馬二ノ瀬の白龍園と大徳寺塔頭黄梅院を含め、20余りの庭園が紹介されている。
白龍園は春と秋に特別公開しているが、今春から1日100人の限定が外れ観覧し易くなった。
深山の秘境をゆっくり巡ってみたい。
黄梅院には特別拝観の際に訪れた。
千利休作庭の緑深い直中庭と白川砂の破頭庭が対照的で興味深い。
龍源院は国内で最も小さい石庭と言われる東滴壺が魅力的だ。
大仙院の枯山水は、滝から川、そして海へと流れる中に宝船や亀の石があって面白い。
高桐院の楓の庭は自然な雰囲気で落ち着くが、ここは参道も素晴らしい。
美しい苔と竹、木立ちの中を敷石が真っ直ぐ伸びる様は息を呑む。
瑞峯院の独座庭は荒波を模したダイナミックな砂紋が印象的で、大好きな枯山水の一つだ。
定年京都移住1-48_極上の京都
京都を紹介するテレビ番組は多い。
数年前になるが「極上の京都」は良かった。
斬られ役大部屋俳優、福本清三の平板なナレーションで、各界京都人の一押しスポットを紹介する。
庭園の整った大寺院ばかりでなく、浄瑠璃寺、蓮華寺、法然院など自然豊かで素朴な所を推されるのが興味深かった。
市川猿之助「知られざる物語京都1200年の旅」、近藤サト「古都浪漫こころ寺巡り」、藤真利子、室井滋「京都国宝浪漫」、本上まなみ「京都浪漫美と伝統を訪ねる」などは学術的な面もあり勉強になる。
椎名桔平「悠久への旅とっておきの京都」、船越英一郎「京都の極み」は素敵な店の紹介が多く、旅行プランの参考にさせて頂いた。
最近は、中村芝翫「京都ぶらり歴史探訪」、笑福亭純瓶「京都よろづ観光帖」など楽しんでいる。
コンパクトだが「京ぶらり」「至福の京都ふらり散歩」「京都建築探偵団」も面白かった。
これだけあると、番組タイトルが似通ってしまうのは致し方ない。